花崗岩を求めて

8月のピレネー山脈から帰ってきて、2週間の自宅謹慎を粛々と完遂したわけですが、カムの先も乾かぬうちに、また行ってきました。今回もスペインですが、今ヨーロッパで一番地獄に近い街、マドリードの郊外のグアダラマ山脈です。今回も地獄の格安航空ライアンエアでロンドンからマドリードへひとっ飛び。コロナウイルスの第2波が猛威を振るうマドリード、行く人なんていないんでしょう。飛行機はガラガラでした。

マドリードについて車を借りて、空港から1時間でグアダラマ山脈の麓のマンサナレス・エル・レアルというサッカーのチーム名みたいな街に着きます。大きな貯水湖のほとりにあり、城もあります、なかなか風光明媚です。マンサナレスの後ろにはラ・ペドリサというクライミングエリアが広がってます。スペインではかなり有名なエリアで、言うなればスペインの小川山でしょうか。乾燥した大地に、数えきれない花崗岩の岩峰。若干ジョシュアツリーに似ていないこともないかと思います。まぁ、ジョシュアツリーも所詮はアメリカの小川山なので、やっぱりクライミングは小川山で決まりでしょう。


ペドリサのクライミングを一言でまとめるならば「スラブ」です。クラックもありますが、ここへきたらスラブを登りましょう。

初日は住宅街から徒歩15分というエル・アルコルノカルというルルルなエリアで足慣らし。ここは前に一度来たことがあるエリアなので、同行者のピートおじさんに何本かのおすすめを紹介。5+から初めて、6a, 6b, 6cとテンポ良く足慣らしをしていきます。


エル・アルコルノカルのスラブ(写真は去年のものですが今年も青空に恵まれました)

二日目はペドリサ・ポステリオールというすこし山の中に入ったエリアへ。ペドリサにはアンテリオール(前)とポステリオール(後)という二つに大きく分けられていて、ガイドブックも別になります。今回目指すのはポステリオールのシンボルの一つエル・パハロ。ペドリサの中では大きい部類の岩峰で5~6ピッチ(~200m)のルートが沢山あります。

車で公園内の駐車場にいき、そこから徒歩で1時間45分くらいのアプローチです。松に囲まれた遊歩道と花崗岩の奇岩が目を楽しませてくれます。スペインでは現在、公共の場でのマスク着用が義務付けられていますが、運動中は例外になります。ただ、若干「運動」の定義が曖昧で人によっては散歩も運動に入るようで、いちど遊歩道にはいるとマスクしている人としていない人が半々くらいの割合でした。


途中でみたデススターみたいな岩


ペドリサ・ポステリオール遠景。


パハロを下から望む。今回のルートはクラシックルート。スール・クラシカのダイレクトバリエーション(6c)です(トポ)。クラシカとはスペイン語のトラッドなので、終了点以外はボルトなしになります。 前半は6a, 6a, 6cと、いい塩梅の難易度が連続します。クライミングもザ⭐️花崗岩なレイバックやチムニーと多彩です。後半は4, 3, 4と難易度は下降しますが高度感のある簡単なスラブをぐいぐい登っていく感じで楽しめます。



最終ピッチ。短いけどプロテクション0!


他のパーティーが綺麗なレイバックピッチを登ってました。



パハロの隣にあったエル・ゲレーロというこれまた特徴的な岩峰。もちろんルートもありますが今回はパス。

三日目はペドリサ・アンテリオールの盟主イェルモです。これもパハロに並ぶ有名な岩で、スラブの聖地、総本山、甲子園、ウータンクランみたいなエリアです。街の駐車場に車を止めて、徒歩で1時間半くらいです。町から見ると、はるか高い丘の上に鎮座しているのが見えるように、アプローチの高低差は結構あります。


見事なまでのドーム感。登ったのはビア・ナニというルートのヤン・サン・ポ・バリエーション(6a) (ナニのトポ)。ツッコミどころ満載の名前ですが、ルートの質は5つ星。技術的な核心は2ピッチ目の6aですが、ルートの醍醐味は3, 4, 5ピッチ目のスラブです。難易度は5ですが、ホールドらしいものはほとんどなく、ただただスメアで歩いて上がる感じです。ガイドブックには「嬉しいボルト数」とありますが、多いピッチでもボルト間の距離は6mくらいあります。「まず落ちることはない」と信じ、頭のスイッチをオフにして、黙々とペタペタしていきます。


5ピッチ目は30mにボルト2本でした!


この青空を見よ!


当初はイェルモで2本登る予定でしたが1本で満足でした。あと、下降が思いの外怖くて。。。というわけで、帰りに少し寄り道してクラック。



3番のカムのトリガーワイヤーが切れたのテープで応急処置。


夕日を映えるペドリサ・アンテリオールの岩。

さて四日目です。ここまではずっとペドリサでしたが、実はペドリサの近くにはラ・カブレラというクラック天国があるのです。まぁ、小川山のような世界にその名を轟かせるエリアに比べると「天国」なんていうのも気が引けますが、それでも、マドリード周辺のクライマーから愛される可愛い天国なのです。マンサナレスから車で30分くらい。

カブレラで外せないのがピコ・デ・ラ・ミエルという岩峰です。長いもので150m位のルートがあります。トポを見てもらえばわかるようにかなりの数のルートが密集しています。それだけ愛されているのがわかります。別段登るルートも決めず、とりあえず基部まで歩きます。その途中ローカルおじさんパーティーと立ち話

「お前らどこから来たんだ?」
「そうか、イギリスか」
「どこ登るんだ?」
「なに、決めてない?じゃぁおすすめを教えてやる」
「チョコラテってのがいいぞ」
「そうだ、チョコラテがいい」
「おまえら、ぜったいチョコラテ登れよ」

との強い押しに負けてチョコラテ(5+)。コーナー、スラブ、クラックありで、なかなかいいルートでした。ただ、5+にしては若干辛いかも。ピートおじさんは「あれは典型的なサンドバッグだ!」とぼやいてました。チョコラテを登って頂上でお昼を食べて、そのまま稜線上をあるき他のエリアへ。そのなもアグハス・デ・トレス・アミーゴス。アミーゴ!ここでは6aの綺麗なクラックを1本、6aのコーナー(3ピッチ)を1本、たっぷり遊べました。



6aのクラック。若干ワイドからハンドですが、足場が豊富なので、それほどクラック登りにはなりません。


隣の綺麗なフィンガー。12mと短いのが残念。

ここまで四日間登りまくりましたが、五日目でついに雨。それもかなりの暴風雨。午前中は「雨の日の定番」クライミング用品店巡りをし、午後には雨もあがったので、グアダラマ山脈の麓でハイキング。松林がとても綺麗でした。


木の幹の色が変わるの、なんでだろう?


と考えふけるピートおじさん。

六日目!天気も復活。指も復活!というわけで、再度クラック天国。一本目からクレイジージャムにも負けないくらいの綺麗なハンドクラック (地元クライマーの愛に溢れたブログ記事)。昇天!インターネットに載ってる難易度6c+はかなり盛りすぎですが、スペイン人のクラック愛増し増しグレードということで、敢えて問題にはしません。クラックの隣にはこれまた綺麗なコーナーがあります。こちらも存分に楽しませていただきました。ただ、あまり人がこないのか、クラックとコーナーの間のフェイスに脆いフレークが何枚かありました。また、クラックやコーナーに入るまでのアプローチに中空のフレークが沢山があったのは残念。


クラックを楽しんだ後は再びピコ・デ・ラ・ミエル。エステバン・アルティエリ(6a)。全4ピッチですが、1, 2, 3ピッチが全てクラシック!


3ピッチ目のヨセミティックなコーナーいくピートおじさん。


1ピッチ目のこれまたヨセミティックなフレークを登るピートおじさん。


ラ・カブレラの稜線近く。

七日目は帰国なので、ペドリサで半日スラブ締。



帰りの飛行機からピコ・デ・ラ・ミエルが見えました。



と、頑張って細かく記録してみました。スペイン、クライミングと聞くとやっぱり石灰岩のスポートのイメージですが、花崗岩やトラッドも沢山あるってことが伝わればいいかなと思います。
 

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